2026/06/02 15:44

一本のデニムにドラマがある。


約二年前にお買い上げいただいたデニムが、ジップ修理のためお店に戻ってきた。
久しぶりに再会したそれは、リジットだったとは思えないほど柔らかく馴染み、色も落ち、穿き込まれた形跡がしっかりと刻み込まれていた。

聞くと、飲食のお仕事でも日常的に履いてくださっているそう。
あのデニムが、まるで全く別物かのように存在していた。

服は人の暮らしとともに育っていくんだということを、改めて見せてもらった気がした。


私たちは"服を売る"ということを仕事としている。

今度のデートで。
来月の旅行に羽織るジャケットを。
息子の入学式にセットアップを。
娘の卒園式でスーツを。
友人の結婚式でドレスを。
仕事で着るシャツを。

その服を着ることで少し気分が上がったり、日々が楽しくなったり、時に良い思い出にもなったりする。
自分たちが扱っているのは単なる個体ではない、その先にある誰かの日常であり、非日常でもある。

今回このデニムもまた同じで、提案したものが暮らしの中に入り込み、傷んだから手放すのではなく、修理をしてこれからも穿き続けたいと思っていただけること。
服は売った瞬間に終わるものではなく、その先の時間で価値を重ねていく。

店を続けていると迷うこともある。

けれどこうした瞬間に触れるたび、届けたいものは服そのものだけではないのだと思い出させてもらい、それが私達の活力へと変わる。

支えているつもりでいて、実は支えられているのはこちらかもしれない。


そんなことを改めて教えてもらった機会だったことを、ここに記す。